小林和史(Kazushi Kobayashi)
デザイナー、アーティスト。outsect
主宰。1983年イッセイミヤケデザイン事務所にてパリコレクションデザイナーとして勤めたのち独立。ファッションを中心として様々なジャンルで活動を続けている。ピエールカルダン賞、装苑日本テレビ賞など受賞多数。
代表作品:1998年「エミールガレ×小林和史展」... 続きを読む
OUTSECTアーティスト/デザイナー 小林和史
2007/08/01
僕の腕で15年間時を刻んでいる腕時計について話をしよう。
現在、バンドに埋め込まれた青いオパールは、1990年にアリゾナ州-トゥーソンで買った、シルバーのインディアンジュエリーである。当初はターコイズ(トルコ石)がセットしてあったのだが、10年程前に欠落してしまった。かわりに自分ではめ込んだのが、このオパールである。この石は、彫金のマスターと、オパール鉱山を探しにメキシコ北部の山岳地域を旅した時に手に入れた、地元の宝石ブローカーから買い付けたメキシコオパールである。
実は、もう一方には黄金に光り輝くファイヤーオパールがはまっていたのだが、これも数年前に欠落。かわりに東急ハンズの天然石コーナーで買った真紅のガーネットを入れた。大きさがぴったり合ったし、赤い色は僕のラッキーカラーらしいので良しとしている。このシルバー製の部分に対し、当初ついていたストレッチのバンド部分がステンレス製でチープな感じがしていたので、帰国後、日本製のアンティークのバンドに取り替えた。
以前僕は某デザイナーズブランドでパリコレクションを担当しており、時計バンドで服のベルトをデザインしたことがあった。その時製作を依頼したのは、確か荒川沿いの小さな工場。細々と金属の時計バンドを作っているようなところだ。昭和初期のストレッチのメタルベルトがまだ沢山あり、この真鍮製のキャタピラにワニ皮のチップがはめ込まれたレトロなデザインがなんとも気に入って、貰っておいたのだ。
さて、時計のモジュール部分だが、なかなかこれに合うものがなくて困っていた。15年程前に、これも渋谷東急ハンズの時計売り場でとりあえず良さそうな四角い時計を発見した。手にとってみれば裏ブタに「silver」と刻印してある。
その割には、値段が安かったので即買いしたのだが、その後、全く変色しないので品質は甚だ怪しい、と云うよりは確実にステンレスではないか?!当初白い文字盤があまりに生々しいので、やはりメキシコの旅のイメージから、時計を分解して文字盤に錆を入れてみた。錆は15年経過した今でも少しずつ変化しつづけている。一見してみれば半世紀も経ったであろうアンティーク時計の有様だが、良く見れば、針の動きは、現代のクオーツなのである。
メキシコ、アリゾナ、荒川、そして東急ハンズ。なにやらちぐはぐな組み合わせだが、それも経年変化と云うデザインのあり方のひとつかもしれない。
果たして、とりあえずは完成形としてこうして僕の手首に収まってはいるが、この先壊れたり、欠落していくたびに、またどんな風になってゆくものやら、僕にも解らないのである。
