連載コラム グルメ 【マックロマンスの遊牧民的バーライフ】 Vol.2

ミントリキュール

バー・スタイリスト MAC ROMANCE


2007/08/13

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若い頃ヨーロッパでミュージシャンをやっていた。秋にスタートしたライブツアーがクリスマスシーズンを前にして、何でだか知らないけれどオランダで終了するというのが2年くらい続いたことがある。その頃は住む家もないからツアーが終わっても帰るところがなく、最後のステージが終了したらそこでいきなり解散、きのうまでのホテル暮らしから突然ホームレスになることを余儀なくされるわけである。真冬のオランダでホームレスとは何とも心細いかぎりではあるが、実際はそうでもなくて、知り合った人の家にころがりこんでは、大麻を吸ったりセックスをしたりケーブルテレビを観たりして、また春が来てレコーディングだかでバンドに呼び戻されるまでの数ヶ月間を無駄に(本人としてはけっこう有意義に)すごすのである。

ミントリキュール

堕落した生活様式を好むという悪習性が身についたのはこの頃だと思う。さすがにもう大麻を吸ったりはしないけれど、今でもソファや床にころがって何もしないですごす時間というのが大好きである。

オランダですごしたクリスマスや正月がどんなだったかは、もうほとんど忘れてしまった。年越しは人々が街にくりだしてハデなお祭り騒ぎになることで有名らしいが、それも憶えていない。誰かの家のホームパーティーに招かれて、ミントのリキュールを飲んだことだけを何故か鮮明に記憶している。食事の後で、客人にミントリキュールがふるまわれたのだ。おちょこぐらいサイズの小さなグラスが配られて、ホストがアンティークのボトルに入った緑色のどろっとした液体をグラスに注いでまわる。ハッカの香りに包まれた甘いシロップのような飲み物を口にして、何だか洒落た気分になったものである。


ミントリキュールは日本でもおなじみのポピュラーなリキュールである。たいていはカクテルの材料としてバーのストックに入れられている。これがストレートでお客に提供されるということはほとんどないと思う。ミントに限らずリキュールに何も手を加えないでそのまま飲むという習慣は我々にはない。バーテンダーの人たちはいろんなものを混ぜ合わせるのが仕事と思っているから、リキュールをストレートで飲ませようとはしない。ミント系のお酒が飲みたいと注文されてリキュールをそのまま提供したらお客はたぶん手を抜かれたと思ってがっかりする。でも、食後のデザートとして召し上がるのであれば、リキュールには何も手を加えない方がよろしい。どうしようもなく甘いのがリキュールだけど、ナッツやチーズとの相性は抜群だと思う。だいたいにして酒はボトルにつめられた状態が完成品だというのが私の持論である。これについては長くなるからまた別の機会に語る。

ミントリキュール

オランダについて想いをめぐらしていたら、別のことを思い出した。盗んだ自転車をカフェだかの店先に立てかけて一杯ひっかけていたところ、店の人から、アムステルダムでは自転車に必ず鍵をかけるように。とアドバイスされたことがある。オランダの人はだいたいにおいて外国人旅行者に対して親切だ。この外国人旅行者が何で自転車に乗っていたかは、あまり考えなかったようである。


マックロマンス(MAC ROMANCE)

マックロマンス(MAC ROMANCE)

1965年8月東京生まれAB型。1983年単身渡英しプロミュージシャンとして活動する。1988年帰国、バーテンダーに転身。1993年東京都目黒区自由が丘に「プースカフェ」を開店、自ら店に従事する。2003年バースタイリスト活動を開始。バーのプロデュース、カクテルブックの制作など多方面のフィールドで独自スタイルのバーワークを展開... 続きを読む





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