澤谷美幸(Miyuki Sawatani)
エコテスト(株)マネージングディレクター。社員は「女性かつ環境を専門にした大学院卒に限る」というセクシー企業。NPO法人菜の花プロジェクトネットワーク・東京ブランチ、日本社会情報学会ISAC研究部会・事務局も勤める。
エコテスト株式会社マネージングディレクター 澤谷美幸
2007/08/30
世界中で地球温暖化対策のための議論が交わされる中、学者は悲観的な未来を語り、政治家は自らのイメージ向上のための政策を進め、企業は新たなビジネスチャンスを追いかけている、という現状にみなさんは何か違和感を感じていませんか?国内でも「カーボンニュートラル」なバイオマスエネルギー普及に向けた取り組みが官民あらゆるレベルで進められていますが、「バイオ燃料の確保」が目的化した途端、途上国で生産して輸入するのが最も安価で効率的という声も。現にエネルギー資源の生産面積の増加をきっかけに、各国における穀物価格が急騰しているのもご存知の通りです。そうそう、身近ではオレンジジュースも値上がりしましたよね!
このたび澤谷が紹介する「菜の花プロジェクト」は、菜の花の栽培を起点にして、「国内農業の活性化」「循環型社会の形成」「地球温暖化対策」「元気な地域づくり」「田園風景の保全」「環境教育の普及」等の様々な観点から人々を元気にする取り組みで、その考え方に共感した人たちの活動は今や全国45都道府県にまで拡大してきている例です。
強烈な日差しが日本中に降り注いでいた8月5日、澤谷は湖国滋賀県の東近江市で開催された「第4回全国菜の花楽会・学会」に参加してきました。「楽会・学会」は、菜の花プロジェクトに参加する全国の人々が集結し、その苦労や成功について共有するための場。もう一つの全国大会である「菜の花サミット」と並ぶ、菜の花プロジェクトの年間行事の一つです。「楽会・学会」の特徴の一つは中学生や高校生を含む「未来世代」に対しての発表の場を与えること、もう一つは交流会やコンサート等参加者に楽しんでもらうための仕掛けが設けられていること。今回の会場となったクレフィール湖東(*晴れた夕焼けが湖東一美しい立地との声を実感)にも、250人を超える参加者が駆けつけました。
そもそも「菜の花プロジェクト」とは何かと言えば、以下の通り。
減反で作付けが行われなくなった休耕田に菜の花を育て、菜の花畑を作り出す。菜の花から菜種を採取し、国産の食用油を搾りとって天ぷらなどの料理で利用する。(これが黄金色に揚がってそれはもう美しいのです)食後に発生した廃食用油の回収システムを、地域の人たちが協力することで作りあげる。回収した廃食用油は「バイオディーゼル燃料(Bio Diesel Fuel)」(以下、「BDF」。)に転換し、軽油に混ぜて(あるいは軽油の代替燃料として)運送用トラックや農耕用トラクター向けエネルギーとして販売。この一連のサイクルの中に地元の住民や学校、行政機関や企業等が参加することで地域全体が元気になっていく、という仕組みです。そうそう、この菜の花畑やBDFは観光資源としても大活躍。「菜の花ウェディング」と銘打って一面の菜の花畑の中で結婚式が開催されたり、BDFが夜の菜の花畑をライトアップしたりもしています。更に、夏の湖東を照らすイベント、「コトナリエ」(神戸はルミナリエ、東京はミレナリオ!)の燃料としても利用されはじめました。こうした幅広い活動に込めた想いの象徴が「菜の花」であり、その優しさが多くの人たちを惹き付けるとともに、その親しみ易さが「自分たちも(この一連の仕組みの何かを)やってみよう!」というきっかけになってきました。
菜の花プロジェクトは、琵琶湖を守るための「石鹸運動」に取り組んできた滋賀県環境生協の藤井絢子さんたちが中心となってスタートしました。洗濯洗剤や廃食用油等を含む汚水が琵琶湖の水を汚して赤潮等が発生する原因となり、生態系が壊れていく。そんな流れを食い止めるために藤井さんたちは廃食用油の回収システムを作り、水質に悪影響を及ぼすことのない石鹸を作って販売していました。その後、無リン洗剤の普及等もあって石鹸の需要が減ったことをきっかけに、また、ドイツでの先行事例を参考にして、回収した廃食用油を「BDF」に転換して化石代替燃料として利用することを想い付いたことが「菜の花プロジェクト」のはじまりです。今や「菜の花プロジェクト」はバイオマスエネルギー(特にディーゼル代替燃料)の普及モデルとして政府にも認知され、その分野で藤井さんを知らない人はいません。ただ、そのスタートは地域の環境を守り、地域を元気にすることが原点だったのです。
バイオディーゼル・カート
「BDFは他の作物でも作れるのに、なぜ菜の花なのか?」という問いに対して藤井さんは、「確かにBDFはひまわりや大豆からも作れるけど、昔この辺りは一面の菜の花畑だったの。菜の花畑の風景はまさに日本の原風景だし、それを再生することが一つの象徴になるはず。それに” 大豆プロジェクト” じゃ、ここまでは広まってないわよね。(笑)」という趣旨のお話をされていました。
今回の「楽会・学会」では、「コウノトリの郷」として知られる兵庫県豊岡市の中貝市長が基調講演をされました。豊岡市では「コウノトリ」に象徴される失われた田園風景を取り戻すため、環境保全型農業の耕地面積を拡大し、官民の協力の下で作物のブランディングを行い、人々の心と生活を豊かにするための取り組みを進めてきました。「コウノトリの放鳥」は様々なメディアでも取り上げられていたので、目にした方々も多いのでは?中貝市長は講演の最後でおっしゃいました。「豊岡市は豊岡市の答えを探します。皆さんは皆さんの(地域の)答えを探してください。」
藤井さんや中貝市長の自信に満ちた素敵な笑顔を見ていて考えさせられることは、「エコって自分で探すものなのだ」ということ。「地球温暖化」というブームに乗ってメディアから流れてくる「クールビズ」や「ハイブリッド自動車」を受け入れるばかりでなく、自分の立場、住んでいる場所やその歴史・風土、信じる価値観や周りの人々(「未来世代」も含め)のことを考えてできることから手を付けていくこと。そんな努力の積み重ねが日本じゅうに広がり、世界中に広がることこそが、エコの実践なのかもしれない。もし共感してくれる人がいたら、是非あなた自身の答えを探してみてください。そして、あなたの町に何か面白い「地域の宝物」があれば是非私にも教えてくださいね!

エコテスト(株)マネージングディレクター。社員は「女性かつ環境を専門にした大学院卒に限る」というセクシー企業。NPO法人菜の花プロジェクトネットワーク・東京ブランチ、日本社会情報学会ISAC研究部会・事務局も勤める。