連載コラム アート/カルチャー【ちょっと傾いたカルチャー座標軸】Vol.3

「ル・コルビュジエ展」建築とアート、その創造の軌跡(2/2)

荒井曜 (Akira Arai)


2007/09/10

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1918年、彼が31歳のときに描いた「暖炉」と名づけられた一枚の静物画がある。キュビズムを批判して、自ら「ピュリズム」(純粋主義)を提唱していた時期の初期の絵画である。水平線で分割された赤褐色の部分が暖炉であり、その上に書物となにか四角い白い物体が乗っている。最小限に切り詰められた造形性と、それゆえに純粋な理念性をひしひしと感じる静謐な絵画である。「風景」にも見えるなと思っていたら、彼が後に、「パルテノンを描いたつもりだった」と述懐していることを知った。

「ル・コルビュジエ展」建築とアート、その創造の軌跡

ル・コルビュジエは、30代半ばからずっと地球全体をデザイニングする夢を見ていた。パリ、アルジェ、インド、ソヴィエトなどを舞台にした、壮大な都市計画である。黄金比率やその反復性、あるいは絵画の中で練り上げた美の理念を適用された都市空間は、清潔で、壮麗で、思想の純粋性を浮かび上がらせる。それは古代ギリシアの哲人によって執行される計画であるかのような威厳に満ちている。しかし、そこに住みたいと思うかどうかは、また別の話である。

「ル・コルビュジエ展」建築とアート、その創造の軌跡 ル・コルビュジエ「ロンシャンの礼拝堂(ロンシャン、フランス)」1950年、© FLC

と同時に、そのビジョンに一種の恐ろしさを感じるのは私だけだろうか?「輝く都市」というル・コルビュジエの都市計画は、実際にはインドのチャンディガールでその一部が高等裁判所や議事堂などの合同庁舎の「キャピタル」として実現されただけだった。もし、300万人を収容できるような壮大な都市計画を実行できる国があるとしたら、それは美を愛する権力者によって中央集権されている全体主義的国家くらいではないかと思うのである。

美の規範を絵画のような「私的」なものから都市計画のような「社会的」なものへと適応させようと無限に広がる哲人の夢は、多くの矛盾を孕み、とてつもなく面白い。

森美術館 『ル・コルビュジエ展: 建築とアート、その創造の軌跡』
開館時間:月・水-日10:00-22:00|火10:00-17:00|
(いずれも入館は閉館時間の30分前まで。会期中無休。)
入館料:一般1,500円、学生(高校・大学生)1,000円、子供(4歳以上-中学生)500円
(※表示料金に消費税込)
http://www.mori.art.museum/


荒井曜(Akira Arai)

荒井曜(Akira Arai)

群馬県前橋市生まれ。本名、塚田誠一。多摩美術大学美術学部絵画科卒業。
現代美術のジャーナリストとして活動した後、1983年セゾン・グループの映画事業に参加。83年11月、アート系映画の老舗映画館「シネ・ヴィヴァン・六本木」をオープンさせる。同劇場の支配人を務めた後、配給会社シネセゾンに移り... 続きを読む




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