古い記憶の輝かしさと痛み
本作のモチーフとなった「青いエアメイル」は、男女の遠距離恋愛を描いた、しっとりとしたラブソングだ。恋愛の瞬間の美しさといった人生の輝かしい要素と、それがいつまでも続くものではないという現実の厳しさを歌い上げている。リリースから28年、今もなおYumingがライブのアンコールに加えるというこの名曲を、甲斐さやか氏は男女の恋愛物語としてではなく「女子高生の友情と心の動き」というテーマに置き換え、解釈した。
「青いエアメイルの歌詞に『選ばなかったから失うのだと 悲しい想いが胸をつらぬく』というパートがあるのですが、思わず自分を振り返ってみて、恋愛だけでなく人生そのものに“選ぶ”ということの厳しい現実が多々待ち受けていると感じました。とりわけ、人生において若くて弱い時代であっても、私たちは人生の選択をしなければならない。そう考えた時、10代の女子高生という繊細な存在を通じて、生きることの厳しさと輝きを表現できるのではないかと感じたのです。」
「10代という時代は恋愛も含め、日々がとにかく輝いて、宝石のような永遠の時ではないかと思えるような時代なのだと思います。しかし同時に、人生経験が浅く感性が鋭いことから、痛みをダイレクトに受け止めてしまう時代でもあります。この輝きと痛みの両方があるからこそ、人は悩みつつも成長し、生きていけるのだと思うのです。今現在10代の方々はもちろん、既に大人になった方々にもYumingの曲と映像を通じて、この大切な宝物のような時間を思い起こし大事にして欲しいですね。」
自分の選んだ道が正しかったのか、誰もが迷い続けることがあるだろう。しかしそのこと自体に意味があるのだと気づくのは、かなりの時間が経った後。そういった人生の“拠り所”と言える記憶の、キラキラとした輝きとチクリとする痛みを再現したかった、と甲斐さやか氏は語ってくれた。
考えてみれば、音楽とはそういった大切な記憶と強く結びついているもの。Yumingの音楽と重なり合った甲斐さやか氏が綴る映像は、観る者全てに切なくも爽やかな気持ちを与えてくれることだろう。(Written by Kersol)
■あらすじ
主人公の女子高生・奈那子(多部未華子)は家族の都合で頻繁に転校を繰り返していた。それゆえ転入先の学校ではいつも孤立しがちの奈那子であったが、新しい転校先で初めて親友と呼べるような存在・里香(於保佐代子)と出会う。里香もまた、クラスでは“外された存在”ではあったが、2人はこれまでにないほどの輝かしい、楽しい日々を過ごす。しかしある日、再び奈那子が別の学校へ転校することが決まり、その日を境に奈那子に対する里香の態度が変わってしまう・・・。