東京にはいまだ多くの下町風情が東西南北に残されているが、「新宿区落合」もそのうちのひとつ。その昔には“目白文化村”と呼ばれ、多くの芸術家や文化人がこの地に居を構えたという。今や4線5駅が利用可能で、大型スーパーから小ぢんまりとした料理屋まで全て揃ったこの便利な下町に、壮大なスケールの現代的な集合住宅がこの春、完成した。谷内田章夫氏による設計の「FLAMP(フランプ)」である。
大都心を望むビューバス!
高さ55m、楕円形のガラス・カーテンウォールによる高層棟のタワーが上落合の街に映える。ガラス面の外壁が青空を美しく照らすファザードは実に都会的。特に最上層の13・14階に配置されたメゾネットは、2.5層の大きな吹抜けを通して景色を見下ろすとあり、壁いっぱいに空けられた開口部からは新宿の摩天楼と夜景が絵画のように飛び込んでくる。また、部屋のタイプによっては180度のパノラマを眺めることが出来る大型のルーフデッキや、ラグジュアリーホテルのようなビューバス(!)を備えており、無限に広がっていく大都心の光景を最大限に楽しめるようなデザインとなっている。これが賃貸とは!と驚いてしまうほどの充実ぶりだ。
都会のジャングルジム的生活空間
FLAMPは、最寄りの落合駅からはほぼ直結という至便な土地に建つ。そのため、全93戸という規模に対して建築面積はさほど広くないものの、その制約を居室の“高さ”でカバーしている。階高は何と3.75m!各部屋ともに1.5層〜2.5層と、立体的なゾーニングを行っている。
最も居心地が良いと思われる最上層のメゾネットタイプでは、部屋への重厚な扉を開くと、まずは吹き抜けた上下への階段に迎えられる。下方に0.5層向かえば12畳ほどもあるリビング・ダイニング、そして大型スペースと設備を備えたシステムキッチン。また、エントランスから階段を上れば、ベッドルームとなる個室と眺望抜群のビューバスが中層に存在する。更にその個室の上には、高さ1.2m、広さ8畳ほどのロフトまでが備え付けられている。
一つの室内に2.5層ものゾーニングがなされているにも関わらず、設計の骨格がシンプルであるため、ごちゃごちゃとした印象は無い。日常生活においては居室の上下を行き来することになるのだが、階段自体が0.5層分の高さのため、その昇り降りが苦になることはあまりなさそうだ。加えて、トイレが2か所、空調は4基も設備され、デッドスペースをフル活用した収納が至る所に設けられていることから、立体的なゾーニングによる“使いの悪さ”を感じることは殆ど無いだろう。
新宿に向かって広がる大都心の美しいパノラマを借景し、ジャングルジムのような立体的な居室で過ごす都会的なライフスタイルが、上落合の便利な下町に存在するとは実にありがたいミスマッチである。
※コラムタイトル「10時間38分」とは、諸データによりKersolで取りまとめました「就業者の平日平均在宅時間」(在宅起床時間平均4時間29分、睡眠時間平均6時間9分)です。