連載コラム ライフスタイル 【小西康隆の『小粋の哲学』】 Vol.10

極々私的ミシュラン考

(株)インタープラネット プロデューサー 小西康隆


2008/01/04

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極々私的ミシュラン考

あけましておめでとうございます。小西です。

ここ最近、世間では「ミシュランガイド東京」本の中身に関して、色々と物申している方々が多い。週刊誌でも挙って「ミシュランよ、何偉そうに☆付けてんだ!」「やれ、☆が多すぎる」「選考が偏っている」などと様々な意見が飛んでいる。テレビでも同様だ。しかし、初めて日本を訪れる欧米諸国の観光客たちが、「さて、せっかく日本に来たのだから旨いものでも食べたいな。」と思ったら、こんなに便利ですぐ役立つガイドブックは無いのではないかと思うのである。

☆三つ貰って予約が取り辛くなった店だって、日本に来る前に席の取れる日を聞いて旅程を立てれば良いのだし、☆一つの店ならばもう少し容易に予約出来るだろう。ミシュランガイドを片手にレストランを訪れる方々なのだから当然ながら富裕層である。お目当ての店の予約にあわせて来日する位、朝飯前であろう。

美味しい店は東京中探せば無数に在るのだ。でも、トーキョーはそれが余りにも多く有り過ぎるから困りモノなのである。例えば、だ。音楽に目覚めた人がCDのメガショップなんかに足を一歩踏み入れたりしたら、一体全体どうやって聞きたいCDを探せるだろうか。数が有りすぎて、きっと途方に暮れてしまうだろう。だからこそ、店員さんの書く手書きのレコメンドカードを参考に一枚を手に取るのである。でも、これって大抵個人の偏ったセレクトやコメントが記されている事が多い。それでも、あとは買った人が実際に聴いてみて、気に入るか、気に入らないか、判断すれば良い訳である。それが、自分好みのCDだったならば、そこから自分の音楽の道が始まるのである。このプロデューサーが過去に手掛けたCDを探すとか、バックミュージシャンの参加している別のCDを探す、だとか、そうやって自分の好きな音楽を探す楽しみにハマっていくのだ。

僕は料理店もまったく同じだと思っている。まずは、ガイドブック頼りに何処か店を決めて足を運び、自分の舌で実際に食べてみる。そうして、美味しいと思ったら、その料理のジャンルをどんどん攻めて行けば良いだけだ。まぁ、そんな人達は精々一握りだと思うけどね。殆どの方は「あぁ、なんて美味しい料理だったのだろう」と歓喜の声を上げて、母国へそそくさと帰っていくのである。

多くの旅行者は1週間から10日位の行程で日本を旅するのだろう。当然、お初ならば京都を見物し、富士山を見たりするだろう。その中で、美味しい日本の味を堪能したければ、矢張りガイドブックが決めてとなるのだ。聞けば、あの本で選ばれているエリアはセントラル・トーキョーと呼ばれるエリアだけで8か9区に限られているそうだ。また、ちゃんと先付け、前菜が有り、メイン、食事、デザートが有り、と云った一通りのコースで料理が出る店に絞っているのだとか。定かじゃないが、そんな観点から見れば、ナルホドナと思うのである。

極々私的ミシュラン考

要するに「ミシュラン東京」は、僕らのためのガイド本では無いのだ。僕などは、ミシュランに載らずに、見知らぬ外国人観光客たちにも占拠されずに澄んで良かった、良かったと思った店が沢山在る。なにも短期間の旅行者が京成立石の「宇ち多”」や東十条「埼玉屋」まで来なくても良いだろうし、篠崎の「焼肉ジャンボ」を訪れなくても良いのだ。それがたとえ都心だって新橋「京味」や「つじ留」しかりである。東京に住んで居たって、おいそれと直々通えない店を何ら教える必要も無い筈だ。

東京の名店は地道に足で歩いて見つけたり、冒険して美味しいって事を発見して、そっと人に教えて行けば良いのである。どんなに人気の店だって、何度も通っていれば、ちゃんと四季に合わせて席を用意してくれるものだ。要するに足繁く通う事が大事なのである。

さてさて、クリスマスの神楽坂「御料理 山さき」では何を戴こうか。ここの主人、山崎美香は大塚に在る江戸料理の名店で9年余り修行し、独立を果たした。開店の日、彼女がお客様へ配った日本手拭いには「小なべ」と記されていた。これは修行先への礼儀を重んじた粋な計らいでもあった。冬の季節、鴨の巌石鍋にしようか、ねぎま鍋にしようか悩むところだ。ここも開店から早9年、ミシュランでも☆を一つ獲得したから、来年からは益々席が取れなくなるかナ。そう云えば、一年前の夏にこの店で分けてもらった我が家のメダカがすっかり大きくなっている。1ミリか2ミリ程の小さな稚魚が立派になって泳ぎ廻る姿は実に愛らしい。

平成20年の干支は「ねずみ」である。僕も4回目の干支を迎える訳なのだ。「カーソル」読者の皆様が素晴らしい新年をお迎え頂き、「美味求真」の旅に出られる事を願うばかりである。


小西康隆(Yasutaka Konishi)

小西康隆(Yasutaka Konishi)

株式会社インタープラネット プロデューサー。1960年2月、北海道生まれ、渋谷育ち。
10年間のサラリーマン経験の後、バブル経済終焉の'91年に起業。広告制作、生活雑貨のプロデューサーとなり、趣味で始めたバーをきっかけに飲食プロデュースを多く手がけるようになる。現在は飲食店経営の他、広告・ブランディング... 続きを読む




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