マックロマンス(MAC ROMANCE)
1965年8月東京生まれAB型。1983年単身渡英しプロミュージシャンとして活動する。1988年帰国、バーテンダーに転身。1993年東京都目黒区自由が丘に「プースカフェ」を開店、自ら店に従事する。2003年バースタイリスト活動を開始。バーのプロデュース、カクテルブックの制作など多方面のフィールドで独自スタイルのバーワークを展開... 続きを読む
バー・スタイリスト MAC ROMANCE
2008/01/18
セックス・オン・ザ・ビーチというカクテルがある。サントリーのカクテルブックによると80年代後半に公開されたトム・クルーズ主演の映画「カクテル」の中に登場して世界に広まったとされている。ウォッカとリキュールとパイナップルジュースを混ぜ合わせた無難な内容で、一体どのあたりがビーチでセックスなのかさっぱり理解できない。
16才の時にアルバイトをしていた喫茶店のデザートメニューに「女性の夢」という名前のパフェがあった。平べったい器に丸いアイスクリームがふたつ、アイスとアイスの間からバナナがにょきっとそびえ立ち、てっぺんには真っ赤な苺がのっかっているというデコレーションは勃起したペニスに捧げるオマージュである。「わたしつくる人、ぼくたべる人」のテレビコマーシャルに、ある婦人団体が噛みついたのは、たしか私が中学生の頃の話。70年代後半ともなれば、日本でもフェミニストたちの活動が活発化していたはずで、女性の夢=勃起したペニスというあまり品のよいとは言えないジョークが、彼女らの耳に入っていたら大変なことになっていたんじゃないかしらと想像するのだけれど、まあなんたって舞台は四方を田んぼに囲まれた田舎の喫茶店である。ペニスのオマージュが登場したときのお客のリアクションは様々だったけれど、怒りだしたり抗議をはじめたりというお客はいなかったと思う。ふたりで耳まで赤くなってうつむいてしまった初々しいカップルがいて、こちらの方がこそばゆい気持ちになったのを今でも憶えている。
そもそも、食とエロスはどことなくつながっているような気がする。私の友人にはそれらはまったく同じと断言する者もいる。知り合った人とどこかで食事を共にすれば、その相手がどんなセックスをするかだいたい想像できる、というのが私の持論である。順序よく食べる人、がつがつ食べる人、あまり食べない人、大人数で食べるのが好きな人、となりの皿が気になって仕方ない人、食べるときに汗をかく人、食べないで話ばかりしている人、人が食べているのをずっと見つめている人。ほら、まるでベッドの中といっしょだ。一緒に食事をしてあまりうまくいかなかったのだったら、さっさと会計をすませて今夜は別々のところに帰った方がよいと思う。そんなこと私に言われてなくてもみんなそうしてると思うけど。
あえて料理や飲み物にエロティックなイメージや言葉をもってくるのなら、スマートにやってもらいたいと思う。ありきたりの飲み物にタイトルだけエロいのをもってきた冒頭のセックス・オン・ザ・ビーチのようなカクテルの存在に私は賛同できかねる。「女性の夢」の方がよっぽどましだ。
セックス・オン・ザ・ビーチに匹敵するぐらいショッキングなタイトルのカクテルがある。「ブロウジョブ」というのがそれで、ブロウジョブとはつまりフェラチオのこと。細長いショットグラスにコーヒーリキュールとアマレット、フレッシュクリームを混ぜないように順番にフロートさせ、グラスをくわえて手を使わずに上を向いて一気に喉に流し込む。バーのカウンターで50歳ぐらいのご婦人がこれをやっていて、それまで騒いでいたまわりの男どもが突然一斉に帰り支度をはじめた場に居合わせたことがある。カクテルを飲み干したあとの口のまわりをべとべとにしたそのご婦人のご満悦な笑顔は、できれば私も見たくはなかったけれど、どうせ下品に行くのならこれぐらいやってもらいたいものである。

1965年8月東京生まれAB型。1983年単身渡英しプロミュージシャンとして活動する。1988年帰国、バーテンダーに転身。1993年東京都目黒区自由が丘に「プースカフェ」を開店、自ら店に従事する。2003年バースタイリスト活動を開始。バーのプロデュース、カクテルブックの制作など多方面のフィールドで独自スタイルのバーワークを展開... 続きを読む