連載コラム グルメ 【マックロマンスの遊牧民的バーライフ】 Vol.24

酒場のたわごと

バー・スタイリスト MAC ROMANCE


2008/01/25

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映画を観にいったらBGMがずっとボブ・マーリーで何だか懐かしい気分になった。帰宅してインターネットで何曲かダウンロードして、今もそれを聴きながらこのコラムを書いている。ボブ・マーリーはレゲエの神様なんて言われているけど、意外にもレゲエのマニアの中にはボブ・マーリーのことを否定する人たちが少なくなく(パンクのマニアがセックスピストルズを否定するのと同じ理由だと思う)主体性のない私はそういう人たちの言葉を真に受ける傾向にあり、そんなでボブ・マーリーは長い間私の愛聴リストからはずれていたのだけれど、今こうやってあらためて聴いてみると、やっぱりボブ・マーリーはボブ・マーリーで、レゲエの人たちが何と言おうと良いものは良いと思う。大人になって音楽は頭ではなく体で聴くようになった。

酒場のたわごと

ボブ・マーリーをはじめて聴いたのは10代の頃だった。80年代の初頭、パンクロックのムーブメントが終焉をむかえようとしていた頃、イギリスを中心にニューロマンティクスという真に気色の悪いムーブメントが台頭してきていて、中世の貴族のようなひらひらした衣装や化粧を身にまとった趣味の悪いファッションとシンセサイザーをふんだんに取り入れたポップミュージックで、世を風靡していた。

そんな中、同じように派手な衣装とポップミュージックを軸にしながらも、ニューロマンティクス(どころかどこの)のカテゴリーに属することなく、強烈なオリジナリティーをもって世界中から注目を集めていたグループがあった。ボーイジョージ率いるカルチャークラブがそれである。カルチャークラブが他のグループと異なったのは、中心人物のボーイジョージの存在感もさることながら、その深い音楽性だったと思う。他のグループの多くがいわゆるグラムロックの影響を引きずっていたのに対して、カルチャークラブのルーツはソウルミュージック、これにレゲエやサルサなどのダンサブルなビートがミックスしたその心地よいサウンドはクラブやディスコはもとより小学生にいたるまで、世界中の幅広い層に受け入れられた。

私がレゲエをという言葉を知ったのはこのカルチャークラブの存在を介してのことだったと記憶している。どうやらレゲエという音楽があるらしいということはわかったけれど、それ以上の情報が全くない。音楽好きの先輩に聞いてみたところ、そこでボブ・マーリーという名前が出てきた。さっそくレコードショップに走りアルバムを入手、喜び勇んで友人宅を訪れ、期待に胸を膨らませながら、レコードに針を落としてみた。そこから出てきた音は確かに当時の私たちにとって新しい音だった。それは私たちの心を動かしはした。でもアルバムを聴き終えた後の私たちには何か納得いかないものが残っていた。私たちがレゲエという音楽に期待したものがそこには何も感じられなかったのだ。

私が買ったレコードがボブ・ディランのアルバムだったということを知ったのはそれから数ヶ月も後になってからのことだった。そういう出会い方をしていなかったら、ボブ・ディランが私のヒーローになった可能性は少なくなかった。そのレコ−ドはそのまま友人にあげた。

ようやく手に入れたボブ・マーリーのレコードは45回転のシングル版で、曲は「ウエイティングインヴェイン」だった。窓の外は6月で静かに雨が降っていた。ボブ・ディランをいっしょに聞いたのと同じ友人といっしょにそれを聴いた。曲が終わってからしばらくの間ふたりで黙り込んでしまった。沈黙にて感動を共有していたのだ。

酒場のたわごと

今でもウエイティングインヴェインを聴くと、あの頃のことを容易に思い出すことができる。そこはいつも雨が降っていて、私たちは将来を見失っている。向かいのアパートの女子高生がベランダで親に隠れて煙草を吸っているのが見える。

さあそろそろ寝ようと思って家の電気を消してまわり、テレビを消そうと思ったらベストヒットUSAだった。当時からきっちり20年分老けた小林克也に紹介されて出てきたのは、エレキギターを抱えて観客からブーイングを浴びせられているボブ・ディランだった。1965年。私が生まれた年の映像だった。

酒の話?バーカウンターでは酒を語るなかれってね。


マックロマンス(MAC ROMANCE)

マックロマンス(MAC ROMANCE)

1965年8月東京生まれAB型。1983年単身渡英しプロミュージシャンとして活動する。1988年帰国、バーテンダーに転身。1993年東京都目黒区自由が丘に「プースカフェ」を開店、自ら店に従事する。2003年バースタイリスト活動を開始。バーのプロデュース、カクテルブックの制作など多方面のフィールドで独自スタイルのバーワークを展開... 続きを読む





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