2008年2月9日(土)から4月13日(日)まで東京都現代美術館(東京都江東区)において、MOTアニュアル「解きほぐすとき」が開催される。
1999年にスタートした「MOTアニュアル」は、その時々の時代状況や美術動向を切り取るテーマ、あるいは現代における美術表現の可能性を探るテーマを設定し、若手作家を中心としたグループ展として毎年開催されている。本年は、「解きほぐすとき」をテーマに、事物をばらばらに解体し、解きほぐすことで自分なりに世界の輪郭を捉えようとする5人の作家を紹介する。
私たちの身のまわりには、多くの物や情報が溢れている。それらは生活を豊かにする一方で、善悪や真偽の判断を難しくし、境界や輪郭を分かりづらくもしてしまう。そのような中で、物事の成り立ちや本質を少しでも理解しようとする時、目の前にある形をばらばらに解きほぐしてみると、表面的に隠されていた構造や裏側が見えてくることがある。解体された断片を見つめ、実際に手に取り、その重みや手触りを実感することは、元の形や全体像を捉えるうえで有効な手がかりの一つとなるだろう。目に見えるのは常に物事の一面でしかなく、その形は流動的で一定ではないということも、改めて理解できるだろう。解きほぐし、読み解くことは、決して正解を探すことではなく、本来的に曖昧で不確かであるはずの物事を、そのように認識し直すことでもある。
本展で取り上げられた5人の作家は、いずれも事物のあらましを読み解き、解きほぐすことで、その構造を知ろうという態度を取っている。布や糸、印刷物や文字による表現など、絵画でも彫刻でも版画でもない、その間にある独自の表現を行っている。解きほぐすという行為の中で、細分化された断片と向き合い、取捨選択を繰り返すことで、自分なりの価値判断を行っているのである。それは、手っ取り早い回答や、うわべだけの感動を求めやすい世相にあって、単一の価値観に囚われないための確認作業でもあると言える。当たり前だと思っていた世界を解きほぐすとき、そこにはいつもとほんの少し違った何かが見えてくることだろう。
「解きほぐすとき」をテーマに、2008年にMOTが注目する作家は金氏徹平、高橋万里子、立花文穂、手塚愛子、彦坂敏昭という面々。流木、プラスチック、白地図、写真、紙、文字、織物、インクなどの多彩な素材を使い、MOTの会場を活かしたダイナミックな展示により様々な視点や手法を見せてくれる。また、各作家が本展のために新作を展示し、過去の作品から最新作までを一堂に会することにより、彼らの制作活動の歩みを一望にすることができる。
金氏徹平 参考図版≪飛沫と破片≫ 2007年 提供:国際交流基金 撮影:Yan Da Wei
高橋万里子 参考図版≪月光画≫ 2007年
手塚愛子 ≪縦糸を引き抜く 新しい量として≫ 2003年
スパイラル/ワコールアートセンター蔵 撮影:福永一夫
立花文穂 参考図版「Q体より」 2005年
彦坂敏昭 ≪燃える家 No.05≫ 2007年