西村陽(Kiyoshi Nishimura)
大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む
大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽
2008/02/12
先日就職活動真っ最中の大学3年生100人以上の前でエネルギー・環境の話をする機会があった。売り手市場と言われる中でもなかなかの熱気で、特に彼・彼女たちの地球環境への関心は高い。「一生の仕事として環境問題にかかわりを持てる会社に入りたい」「地球のために自分自身も何か仕事を通じて貢献していきたい」という気持ちもよく伝わってきた。
しかしながらその一方で、情報の正確さ、深さや見識の確かさは心もとない。彼・彼女たちが地球環境を語る時の根拠のほとんどは新聞やテレビの受け売りであり、さらに言えば今の地球環境問題にかかわる論点やポスト京都の枠組みで誰と誰がどう対立しているかさえほとんどの学生が理解できていない。新聞や雑誌で氾濫する情報を断片でしかとらえることができず、自らの思想として再構成する能力に欠ける、というのは現在の大学生に対して良くなされる指摘だが、氾濫頻度の高い地球環境問題ではさらにこの傾向が顕著になるようだ。
まして彼・彼女らが直面しようとしているのは就職活動であり、その多くは民間企業で働くことを目指している。企業にとっての環境問題とは決して「世の中こうあるべきだ」という理想論で済む話ではない。企業は自らの本道であるビジネスを通じて環境価値の高い商品・サービスを産み出し、消費者と対話して環境価値を認めてもらい、時には行政からの規制にうまく対応していく、といった地味で困難な仕事を繰り返しているのであり、現在「民」中心に進められている日本の地球環境戦略とは、そうした製造業、サービス業、エネルギー産業すべての分野にわたる企業による努力の集積に他ならない。「環境問題にかかわる仕事をしたいんですが、どの会社に行けばいいのかわからないんです」という大学3年生は、これらの企業の現状と課題について自分は何も知らず、勉強もしていませんと言っているのと同じである。
とは言え、こうした大学生の熱意を「君たちは不勉強だ」と切り捨てるのももったいない気がする。日本企業は確かに周到に、着実に温暖化対策、CO2排出削減を進めているように見えるが、その背景に常に「世の中こうあるべきだ」「わが社はこう貢献したい」という良い意味での「理想論」はあるだろうか。企業である以上ビジネスベースで、利益に貢献する環境貢献であることは当然だが、その中には本来「わが社は地球社会に対してこう貢献したい」「日本の地球環境政策の一翼を担いたい」という「夢」がなければならないはずである。それが不足したり、ゆらいでいるのなら、不勉強な大学生を取り込んで勉強させて自社の戦力にする手もあるはずだ。
多くの学生が地球環境問題に興味を持つ今だからこそ、今年の就職・採用活動を通じてよい出合いと学びがたくさんあることを大いに期待したい。

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む