西村陽(Kiyoshi Nishimura)
大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む
大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽
2008/02/26
わが国においてここ数年来の原油高の影響は、最初は固定の石油製品を多く使い、かつ企業体力の比較的小さい特定の業界の採算悪化という形で強く現れた。船舶油→漁業、石油系洗浄剤→クリーニング業、トレイ用化学材料→納豆製造業といったものが代表的だが、ここに至ってガソリン→一般消費者、というルートの影響も遂に出てきたようだ。先日発表された街角景気ウォッチャー調査では、「ガソリンが高くなり、車の利用をやめてバイクや自転車に替える人が出ている(北関東・乗用車販売)」という記述が見られた(2008.2.9朝日新聞)。
そこでちょっと考えたのだが、そもそもこの人たちはバイクや自転車にすることが可能だったのに、なぜ今まで乗り換えなかったのだろうか。それは、自動車を利用することの便利さの方が、払うコスト(ガソリン代)よりも大きかったからに他ならない。つまり、ガソリン価格の上昇が、この人たちの排出CO2を減らしたのである。同じような例として、90年代以降全国に普及していた発電効率の低いA重油・非コジェネ型の自家発電が近年ほとんど姿を消し、電力会社の電気に切り換えられたという事象がある。原油価格が安く、A重油がダブついていた時代には電力会社の電気に比べて価格優位がったために多くの工場やスーパーでコストダウンのために導入されたが、原油価格が上がった結果よりCO2排出の小さい電力会社の電気に切り換えられた。
温室効果ガスの削減について、価格の効果と意志の効果とどちらが大きいか、という議論がよくなされる。価格の効果は今述べた二つの例のとおりだが、意志の効果とは、一般消費者や企業が経済合理性以外の行動でより環境に優しいもの、CO2排出の小さいものを、より高い価格を払い、努力をしてでも選ぼうとすることである。企業の多くは自ら環境報告書を出し、グリーン調達も行なっているのでそれなりの「意志の効果」はあるが、問題は一般消費者である。一般消費者の支払意志調査をWTP(Willingness To Pay)調査と呼ぶが、往々にしてアンケート段階では割高な環境対応商品にWTPがあると半分の人が答え、実際に売り出してみたら1%の人も買わない、ということも少なくない。現実主義者であるエコノミストや企業者が「結局価格しか効かないんだ」と思うのも無理はない。
しかしながら、例えば太陽光発電システムは、初期費用が200万円近くかかり、家庭用の電気料金支払いの減少で回収するには20年以上かかるにもかかわらず多くの一般家庭で設置されている。「納得できて、実感できる」ものならば意志の効果も確かに存在するのである。
原油価格高騰によって、確かにわれわれは「価格の地球環境効果」を目の当たりにしている。そして、価格の効果が出る今こそ、より一層の温暖化対策推進のために「意志の効果」をどう引き出すか、企業の、政府の工夫が試されているのである。

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む