連載コラム エコ 環境問題【環境戦略の新時代】Vol.12

ナンヨウアブラギリ談義

大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽


2008/04/08

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米国を中心に世界の穀物価格が急騰している。原因の一つはサププライム問題であり、資本市場にあり余る金が行き場を失って穀物市場に流れ込んでいるのだ。この構造は石油をはじめとするエネルギーと同じである。そしてもう一つの原因がトウモロコシをはじめとするバイオ自動車燃料に対する米国政府の異常な補助金である。

植物は空気中の二酸化炭素を太陽エネルギーによって固定化するので、植物を加工した燃料を使ってエネルギーを取り出せば、過去の動植物が地中に堆積したものである石炭や石油を使うのに比べてCO2を排出していないことになる、というのが今の温暖化対策の考え方である。その観点から米国政府や各州はバイオ自動車燃料(主に通常のガソリンエンジンで利用可能なバイオエタノール)の導入を進めており、代表的な促進政策としてはガソリンスタンドに対する税制優遇、小規模な製造業者への補助金、消費者へのエタノール購入分控除(減税)があり、エタノール混合を義務付ける州も出てきている。この結果、バイオエタノール生産に米国内で使われるトウモロコシは、ここ5年間で3倍にふくれあがっている。

こうした「食べられるものを燃料にする」ことに対する反対の声も根強い。地球温暖化問題の先駆者の一人であるレスター・ブラウンは、「巨大な燃料需要用は穀物価格を高騰させ、食費に支出の半分以上を費やす20億人もの貧困者の生活を危うくする」と警告している。

ナンヨウアブラギリ 果実の成熟段階 黄色〜黒色で収穫する ナンヨウアブラギリ
果実の成熟段階 黄色〜黒色で収穫する

各果実に種が3個入っている 各果実に種が3個入っている

こうした中注目を浴びているのが今回のタイトルである「ナンヨウアブラギリ」という植物であり、通常はヤトロファ(ジャトロファ)と表記されている。油脂分を多く含む点は通常のバイオ燃料素材と同じだが、弱い毒性があるため食用には適さない(穀物価格に悪影響を与えない)。また生命力が強く、荒廃した土地でもよく育つ。こうした特性から今この植物を大量栽培する計画が東南アジアを中心に進んでおり、大量に生産されるようになれば、主な用途であるディーゼルエンジン車が多い欧州はもちろん、日米の大型トラック燃料、さらには価格競争力を失った日本の石油火力でも使える可能性がある。

今後注目が高まると予想されるこの「ナンヨウアブラギリ」だが、関係者や専門家と意見交換するとまだまだ課題は多い。世界に飢餓が現存している中で食べられもしないものを大量栽培すべきなのか、現状かなり大きい自動車燃料にする過程での消費エネルギーは小さくできるのか、栽培用地のためにかえって熱帯雨林を犠牲にしているのではないか、コストは下がるのか、等等。これらの問題を技術と工夫でしっかりクリアできて、世界の燃料市場に今は知られていない新しい植物が加わることを期待したいものである。


西村陽(Kiyoshi Nishimura)

西村陽(Kiyoshi Nishimura)

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む






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