西村陽(Kiyoshi Nishimura)
大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む
大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽
2008/04/28
近年ドイツが太陽光発電に猛烈な普及策を展開し、設置出力でトップだった日本を抜き去ったのはご存知の方も多いだろう。もともとドイツはユーラシア大陸の北西にあり、安定した風が得られる北岸での風力発電に力をいれてきたが、出力変動による電力系統への悪影響や騒音問題もあり、太陽光発電も有力なオプションとしてきたのである。現在日本円で言うとkWhあたり70〜100円という大変な高値で買い取る制度となっており、ユーロ高の影響があるとはいえ日本で行なわれている25円程度に比べても随分高い。
しかしながら、日本でもドイツでも、電力消費に占める太陽光発電のウェイトはまだ1%にはるかに届かない。昼間しか発電できず、天候条件もあって年間稼働率が10%そこそこの太陽光が既存の水力・火力・原子力とシェアを分け合うようになるには、たとえコストを度外視したとしても莫大な設備量が必要となる。今後の技術開発によるコストダウンと建設促進・コスト負担の仕組みづくりが重要であることは言うまでもない。
そういう話をある高名なエネルギー研究者にしていたら、「西村さん、太陽を使う方法は発電だけじゃありませんよ」と意外な言葉が帰ってきた。太陽光発電は太陽の光が電気として使われるまでに(1)電気へのエネルギー転換効率、(2)直流から交流への転換、(3)自分の家や施設で使わない場合、電力系統に入って使う場所まで送る効率、という三つの壁がある。これに対して太陽の熱を直接屋根で熱に変え、タンクに貯める太陽熱利用の方が合理的ではないか、というのだ。
太陽熱の給湯や暖房への利用はわが国で従来から家庭用を中心に盛んに行なわれてきた。太陽光発電が太陽のエネルギーの10〜15%しか電気に変わらないのに対して、太陽熱温水器では50〜60%まで熱に変えることが可能だ。通常容量は200〜300リットルなので、それだけで家の給湯すべてをまかなうことはできないため、灯油や電気と組み合わせることが必要だが、CO2排出量は大きく低減できる。一時は一部メーカーの強引なセールスから業務停止命令を受ける等社会的信用が傷つき、採用する家庭が減ったこの太陽熱利用システムだが、世界的には見直し機運が高まっているようである。日本にも複数メーカーがあり、屋根のなだらかな日本家屋に合わせた最適設置方法も生み出されている。
家庭用のCO2排出の約半分は給湯・暖房の二つによるものであり、この二つが低炭素社会実現の鍵を握っている。今までその鍵は高効率の電気ヒートポンプだと言われてきたし、それは間違っていないが、それに自然エネルギーを組み合わせることも有力な選択肢となるのではないだろうか。

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む