連載コラム ライフスタイル 【小西康隆の『小粋の哲学』】 Vol.15

粋で色香漂う男の着物を再び復活させて、現代のアウトローを遊んでみよう。

(株)インタープラネット プロデューサー 小西康隆


2008/04/30

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先日、人気ファッション・セレクトショップ「ユナイテッドアローズ」が京都の老舗帯問屋「誉田屋源兵衛(こんたやげんべい)」と手を組み男物の着物のコレクションを発表した。

「誉田屋源兵衛」と云えば創業270年を誇る京都の老舗だが、其れが時代を牽引するファッションメーカーとコラボレーションした事が大変興味深く、面白い。

堅苦しくて、値が張り、流儀が判り辛い「着物」のイメージを覆し、改めて現代ファッションとして浸透させようと試みたファッションショー「傾奇者達之系譜(かぶくものたちのけいふ)」と云うタイトルも中々洒落ているじゃないか。歌舞伎の語源は「傾く(かぶく)」の連用形の名詞化「かぶき」なのだ。本来、「頭を傾ける」事の意だが、ハスに構える様な仕草、行動から「常識を外した」、「異様な風体(ふうてい)」を表すコトバと成り、此れが其の後「歌舞伎」に変化したのだ。

東京コレクション

東京コレクションの最終日、今を時めく最先端のファッションショーを圧倒するべく、室町時代の婆娑羅(バサラ)、桃山時代の傾き者、すなわちアウトロー達が派手な着物や浴衣を身に纏い、花街の花魁に負けず劣らずの艶やかさと華やかさで町を闊歩(かっぽ)するイメージのショーだった。

ショーに登場した着物の柄も多くのが昔の実際の柄だそうだ。真っ赤な生地に墨色の格子が乱れ描かれている「破れ格子」が何とも粋で魅力的だった。

見た途端、真っ先にジョージ秋山氏の漫画「浮浪雲」の主人公の雲の着流しが浮かんだ。

ショーに登場した連中も一癖も二癖も在る存在感で会場を圧倒してくれた。永遠のロックンローラー、内田裕也氏、舞踏家で役者の田中泯氏、ロバート・ハリス氏や今注目の役者、尚玄君などが颯爽とランウェイを歩く姿は印象的だった。

粋な格好と云うモノは照れが有っちゃ駄目なのだ。洋服だって同じである。少しでも自分の姿に照れが見え隠れすると、もう其の服に負けて仕舞って、着こなせ無くなるのだ。


小西康隆

浴衣や着物は小物でも沢山のお洒落が出来る。組紐、草履、下駄、雪駄、扇子、帽子、巾着袋に個性を光らせたり、半襟の色柄やモダンなストールなどで遊んでみるのも粋だろう。僕の友人の父上は昔からずっと仕事から戻ると真っ先にスーツを脱いで浴衣に着替える。当然、今でもそうである。そして、夜の街に繰り出すときも浴衣姿にパナマ帽を冠って行く。此れが実に格好が良くて、僕もいつかあんな小粋な爺ぃになりたいものだと思っていたものだ。

昭和の落語を代表した名人、故古今亭志ん生師匠は、生涯長屋暮らしで貧乏で、大酒飲みでバクチ好き、と貧乏噺を地でいった落語家だったが、貧乏ながらも粋な格好をしていた。草履もわざわざ特注で造らせていたそうで、足で隠れる部分に「徳利とお猪口」の焼き印が施されていたのだ。また、羽織に記した梅の柄も「余り表に出て目立っちゃいけない」との意味を込めて後ろから見た花の茎の絵柄を施していた。こんな粋な事が出来るのも和服ならではの遊び心だろう。

ユナイテッドアローズでは、今月から此の着物の販売を本格化するそうだ。浴衣と注文着(オートクチュール)の「あつらえ」が先の誉田屋が受け持ち、日常使いの着物を京都の呉服屋「山石」が担当する。

今の時代はネットを通じて世界中の文化やファッションが瞬時にして取り込めるようになった。こんな時代だからこそ、日本人のDNAに根付く伝統の粋「着物」を楽しむのも面白いかもしれない。また、常識の枠を飛び出して、個性溢れる着こなしに挑戦するのも好いだろう。浴衣にテンガロンハットを冠って皮のサンダルを履いたって格好良い。

此の春から少しづつ着物や浴衣で遊んでみて、男の美学を磨いてみては如何かな。


小西康隆(Yasutaka Konishi)

小西康隆(Yasutaka Konishi)

株式会社インタープラネット プロデューサー。1960年2月、北海道生まれ、渋谷育ち。
10年間のサラリーマン経験の後、バブル経済終焉の'91年に起業。広告制作、生活雑貨のプロデューサーとなり、趣味で始めたバーをきっかけに飲食プロデュースを多く手がけるようになる。現在は飲食店経営の他、広告・ブランディング... 続きを読む




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