旅行情報 海外 セルビア【I know "Unknown"】Vol.10

ソポチャニ修道院と植物たち


2008/04/30

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修道院

ヨーロッパのバルカン半島中央部に位置する国、セルビア共和国。その首都であるベオグラードより南に300km。森と丘が幾十にも連なる地に中世に建立されたオーソドックスの修道院、ソポチャニがある。

この地はかってスタリ・ラスと呼ばれ、周辺には数多くの教会や修道院の遺跡が残されていることから、人々の生活が常に敬虔な信仰とともにあったことが伺える。

人々の祈りが響く聖三位一体教会

朝の光が壁面に描かれたフレスコ画に色彩をあたえていく 朝の光が壁面に描かれたフレスコ画に色彩をあたえていく

ソポチャニ修道院はセルビア王国の王、シュテファン・ウロシュ1世によって1255年から8年の歳月をかけて建立された。聖三位一体教会の内部を美しく彩るフレスコ画は、聖書の物語を画家たちが異なる年代ごとに描いたもので、最も古い部分は1263〜1268年の間に描かれたものだと考えられている。これは、当時のビザンチン美術をひも解く重要な手がかりとなるものであり、1979年にはユネスコの世界文化遺産にも登録された。

礼拝では、この修道院で暮らす僧侶たちの祈りをこめた歌声を聴くことができる。その厳粛な響きは、祭壇を刻々と照らす朝の光に導かれるように、教会の辺りを飛び交う小鳥達のさえずりと融けあい、スタリ・ラスの澄んだ空へと登っていく。

修道院に寄り添うように生きる植物たち

さまざまな植物を目にすることができる さまざまな植物を目にすることができる

敷地内には数多くの野生の植物たちが自生している。長い年月の中で崩れ落ちた外壁の隙間に根を張るシダや、裏手の森の中から生活の場を広げてきたミントたち。森から吹き込んでくる風は、しっとりとして僅かにミントの甘い香りを包み込んでいる。

90年代に入り、旧ユーゴスラビアを構成していた国は次々と独立していった。その都度、セルビアも国境線を引き直すことになるわけだが、植物たちの間で国境線が変わることは一度もなかった。

境界は常に我々の世界だけに存在するものであり、植物の花粉や種は、人間の定めた境界に縛られず、鳥や昆虫たちと共に自由に行き来する。

セルビアを代表する映像作家ペテル・ラロヴィッチは、99年にNATOによって、自らの暮らす街が空爆されているにも関わらず、森へ出かけ、自然からのメッセージを探しつづけた。


さまざまな植物を目にすることができる

未来に向け、我々が自然から学ばなければならないものは、決して少なくはないはずだ。セルビアの修道院、ソポチャニの小さな植物たちは、今日もひそやかに僧侶たちと対話しているのかもしれない。(Photo&Text:Fumio Matsui)





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