連載コラム エコ 環境問題【環境戦略の新時代】Vol.15

関西環境パートナーシップ

大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽


2008/05/22

クリップする

洞爺湖サミットを控えて、いよいよ日本の温暖化対策のアピール体制が整ってきている。一つは日本型の進め方であるセクトラルアプローチの有効性を世界に説得する試みであり、今一つは欧米のデファクトスタンダードとなっている排出量取引を日本に導入するための仕組みづくりやモデル施行の動きである。

前者については洞爺湖サミット後、各国からどの程度理解が得られたなどを含めてまたこのコラムで取り上げる機会があると思うので、ここでは後者について考えてみると、現在首相官邸では「地球温暖化問題に関する懇談会」が、その実務担当である環境省では排出量取引制度の検討会が継続して行なわれ、排出枠割り当てについての試案も出てきている。今後各業界を絡んでハードな調整が進むことになろうが、近々何らかの仕組みが出来上がることは間違いない。

関西環境パートナーシップ

しかしながら、排出量キャップとその取引は本来仕組みを作ること自体が目的ではない。もともと最小コストで対策が可能な箇所に資金を流れ込ますのが排出量取引の妙味なのだ。すなわち、現在経団連の自主行動計画や省エネ法の規制から漏れていて、大企業よりも小さなコストでCO2排出の削減が可能な工場や施設を見つけ出し、そこでの対策を実施してこそ排出量取引という価格メカニズムを導入する意味があるのであり、極端な話、今の自主行動計画をキャップ&トレードに移すだけでは、最悪大企業が自主的な環境技術開発努力を怠り、その分を金で済ます仕組みになってしまう懸念さえある。

その点で注目されるのは、今まで自主行動計画に参加していなかった中堅・中小企業やサービス業系の業界に参加を促す、どちらといえば小さな取り組みである。例えば経済産業省は中小企業を会員として集め、「国内クレジット推進協議会」の発足準備を進めている。これはエネルギー産業を含む主要大企業が参加し、中小企業の省エネ型への設備更新を会員制のクレジット制度で支援していこうというもので、ちょうど今先進国が途上国での削減成果をCDMの方で買い取って資金支援しているのと同じ仕組みだという意味で国内CDMだと見ることができる。

さらに自主的で、欧州的な目で見ると強制力のない「緩い」仕組みとして、関西経済界が取り組もうとしている「関西環境パートナーシップ」というものもある。これは、関西地域の自主行動計画参加企業が、まずは連結グループ企業、さらには取引先、あるいは顧客となる企業、そして従業員や一般消費者へのCO2排出削減の取り組みを広げていこうというもので、中小企業の設備更新や省エネ投資はもちろん、一般家庭の環境家計簿への参加まで、まずは意識づけから初めて温暖化対策の話を広げようというものである。

これら国レベルでの取り組み、今まで温暖化対策と無縁だった企業や人々を呼び込む小さな取り組みは、ともに重要なものである。そして、特に小さな取り組みの主旨を多くの企業、個人が理解し、参画することが、日本の温暖化対策をより実効あるものにすることは言うまでもない。


西村陽(Kiyoshi Nishimura)

西村陽(Kiyoshi Nishimura)

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む




PR


注目の情報

一軒家レストランの迷宮

一軒家レストランの迷宮

今宵も一軒家レストランに灯りがともる。そこは、ゲストを温かく迎えてくれる我が家のような空間であり、また別世界へと誘う秘密の入り口。