連載コラム グルメ 【マックロマンスの遊牧民的バーライフ】 Vol.44

おいしい水(2/2)

バー・スタイリスト MAC ROMANCE


2008/06/13

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トライアスロンの大会はボランティアの人たちで支えられていて、会場の設置から警備や選手の救援にいたるまで、さまざまな人たちが無償でレースに参加することで運営が賄われている。コース上には何カ所か給水ポイントが設置されていて、そこでもボランティアの方々が献身的に選手をサポートしている。給水所で選手が受けとる水やスポーツドリンクはスポンサー企業から提供されていることが多く、私が参加した大会では大塚ベバレジからミネラルウォーター「クリスタルガイザー」が提供されていた。

トライアスロン大会における給水所は選手にとって砂漠のオアシス、遠くから見えるパラソルを目標に一歩、あと一歩とふらふらになりながら足を前にすすめ、ようやくたどりつくと、ペットボトルに入ったミネラルウォーターがぶっかきの氷の中でキンキンに冷やされている。ああ、なんと美しい光景であろうか。笑顔でペットボトルを手渡してくれるボランティアのクルーはまるで天使、走りながら喉の奥に流し込む冷たい水はまさに命の水の味である。

以来、私がミネラルウォーターを購入する際に、選択の余地がある場合は必ずクリスタルガイザーを選んでいる。別に毎回トライアスロン大会のことを思い出すわけではない。知らずのうちにクリスタルガイザーが私のスタンダードになってしまったようである。私が今後の人生において何リットルのミネラルウォーターを消費することになるのか想像もつかないが、このケースだけで考えてみても、大塚ビバレジの大会への協賛は成功だったんじゃないかと思う。世の企業のみなさまもこれに見習って、よい広告の方法を考えていただけばよいのではないかしら。広告屋さんの言うことばかり信用してないでね。

おばあちゃんちの池

祖母は死ぬ1週間前ぐらいから、栄養はすべて点滴で摂取して一切の飲食を禁じられてしまっていた。直前まで「水がのみたい」と言っていて、あれは見ていてとても苦しかった。いっそひと思いに口を開けて、おいしい水をごくごく飲ませてやろうかと思ったけれど、それが原因でショック死したりしたら、それはそれで後悔が残りそうで行動に移せなかった。

静かに眠りながら逝って、苦しまなくてよかったと思っていたのだけど、死んだ時は閉じていた口が、時間の経過とともに次第に広がってきて、葬式のころにはぱくんと開いた状態になってしまい、なんだか水を飲ませろと言ってるみたいに見えた。母が持参したペットボトルの水を開いた口に流し込んでいた。私だったらショック死してもいいから、生きているうちに水を飲みたいと思った。


マックロマンス(MAC ROMANCE)

マックロマンス(MAC ROMANCE)

1965年8月東京生まれAB型。1983年単身渡英しプロミュージシャンとして活動する。1988年帰国、バーテンダーに転身。1993年東京都目黒区自由が丘に「プースカフェ」を開店、自ら店に従事する。2003年バースタイリスト活動を開始。バーのプロデュース、カクテルブックの制作など多方面のフィールドで独自スタイルのバーワークを展開... 続きを読む






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