西村陽(Kiyoshi Nishimura)
大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む
大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽
2008/07/28
大阪に家と職場がある人間にとって、東京でのランチは貴重な情報源であり、楽しい時間でもある。と同時に、日頃地域主権や分権にかかわっている身として残念ではあるが、行政の分野で「中央の方が進んでいるな」と感じることも少なくない。
先日久しぶりに中華料理を一緒に食べた環境省の友人との会話。「関西で、企業と行政が協力してCO2排出を減らそうという話をしても、省エネ機器の販売促進を狙いたい企業と、節約が最優先だと言う行政で対立して話がまとまらないことが多い」という体験談をしたところ、「今度環境省でこういうことを始めるんですよ」と「エコ・アクション・ポイント」という取り組みを紹介された。
「消費者は環境にやさしい商品を選び始めた!」という記事を見かけることは多いが、実は大規模小売店での購買行動の際に温暖化対策型商品を選択している消費者は全体の5%程度に過ぎず、貯まったポイントの一部を環境保全活動などに寄付する社会貢献型のクレジットカードはカード発行数全体の1%にとどまっている。最近ネット上のポイントをカーボン・オフセットに使うようなスキームも確かに現れているが、決して多数派にはなっていない。
その点環境省が新しく始めた「エコ・アクション・ポイント」は、ポイントを与える商品の認定だけを国が行い、貯まったポイントは通常のものと同じく消費者のメリットとして使ってもらう。これなら95%の消費者にも興味を持って行動してもらえるというのである。
対象となるのはCO2削減やリサイクル促進に効果のある家電、自動車、住宅、文房具、家庭用品、衣料品、食品、バイオ燃料、さらにはレストラン、宅配、ホテルといったサービス、鉄道利用、カーシェアリング、そして直接のカーボン・オフセットと幅広い。当然実施は企業の販売促進費を原資とし、国は商品・サービス認定と仕組み構築費用の一部を分担することになる。
こうした動きは、かつて企業の利益追求や事業拡張とCO2削減(縮小)が明らかな対立概念だった時代から見ると明確な変化と言える。本来の環境省のポリシーから言えば、ポイント対象商品を選択することがわが国全体のCO2排出の総量削減になっているかどうか検証することは極めて難しく、企業の販売戦略に相乗りしにくい部分もあるはずだが、「敢えて民のビジネスと一緒に消費者を惹きつける」という考え方は、多くの自治体が環境に関して持っている「規制・節約が本筋だ」という姿勢から見ると新鮮だ。
現状わが国のポイントカード市場は家電量販店・各種クレジットカード、航空系カード、ガソリン系カード、総合小売系カードの5つが圧倒的なシェアを占めているが、将来もしもそれらの多くに環境の要素が入り、全国で「エコ・アクション・ポイント」のマークであるシロクマ君が見られるようになると結構楽しいのではないだろうか。

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む