西村陽(Kiyoshi Nishimura)
大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む
大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽
2008/08/06
コンビニエンスストアの深夜営業を規制しようという論議が賛否両方で盛り上がっている。エネルギーに詳しい者の感覚としては冷蔵・冷凍用電力に比べて照明需要が微々たるものなのは自明なので、「ほとんど削減にならない」というコンビニ側の言い分はよくわかるし、一方で(意地悪な言い方ではあるが)目に見えるものを血祭りにあげて意識を高めよう、という政策当局者の打算もまあわからないではない。むしろ気になるのは、コンビニ・行政以外の規制賛成派の良識的な皆さんによる「ライフスタイルを昔に戻し、夜はちゃんと休む社会に戻そう」という主張の方である。
確かに多くの国民にとってコンビニの深夜営業は必ずしも必要のないものかも知れない。朝日新聞が行なったアンケートによれば「温暖化を防ぐためになくても我慢できるもの」としてクーラーは45%だったのに対してコンビニ・スーパーの深夜営業は83%にのぼったという。ただ、逆に言えば17%の人たちにとって深夜営業はエアコンなみに手放せない、ということである。
日本の労働者のうち深夜労働やシフト労働に従事する人は300万人近いと言われている。この人たちは昔からあるインフラ産業や建設業、飲食業だけでなく、近年大幅に拡大した運送業はじめとする物流産業、鮮度が必要な食品等の深夜製造、IT化によって拡大した深夜メンテナンスを含むサービス業等、様々な場で働いている。これらの多くは「良識派」の方がおっしゃる「夜は休む」良き時代にはなかった業態であり、今や彼らの活躍なしにはわれわれの「昼の世界」も成り立たなくなっている。しかも大概の深夜ワーカーはあまり豊かではないのだ。つまり、コンビニ深夜営業規制問題は、豊かな勝ち組の「昼の世界」の人間が、豊かでなく、反論の機会もない「夜の世界」の人間の利便を奪う(安価・手軽にモノを買えなくする)ものとも言える。
多くのメディアが話題にすることを避けているが、温暖化防止と貧富の差は密接な関係がある。貧しい家庭がエアコンをいくら節約して使っても、最新機器に買い替える豊かな家庭にCO2削減量で勝ることはできない。同じ構造は国家間にもあり、豊かで社会制度も整っている先進国がいくらインドや中国を削減枠組みに参加しないと非難したところで、総体的にはこれらの国がまだ貧しく、最新技術を入れられないという点は解決しない。温暖化問題とはある意味「貧しく、コストをかけて対策をとれない者をどうするか」という問題に他ならない。
この問題を解くための鍵は、個人間であれ国家間であれ、「豊かな者」と「そうでない者」の相互理解と協力に他ならない。コンビニを深夜閉めておくよりも、24時間、貧富様々な人が参加できる地域のCO2削減やリサイクルのための情報発信拠点、実践拠点にできればずっといいに決まっている。「勝ち組の驕り」と言われないように、豊かな者がちゃんと知恵を絞るべきではないだろうか。

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む