西村陽(Kiyoshi Nishimura)
大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む
大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽
2008/09/08
安倍、福田と地球環境問題に熱心だった首相が相次いで自爆的な辞め方をしてしまったせいで、「温暖化」は日本の政治家によって鬼門となってしまった感がある。こうした政治の混迷は言うまでもなくねじれ国会と年金・福祉等公的部門の不始末による面が大きいが、それとともに明らかになりつつあるのが、日本の政策が一時のグローバル化、言い換えれば低価格化に頼って改革一本でやっていけばよかった時代から、資源インフレ・需要収縮・財政破綻阻止といった複数のベクトルの変化にしっかり対応する複合的な政策が求められる時代に変わってきたということではないだろうか。
そこで気になるのが、一時は「日本の義務だから採算度外視でやって当然」という感じだった低炭素対策、すなわち太陽光発電や電気自動車、省エネ住宅やバイオエネルギーは、経済活性化や需要創出にどの程度効果があるのかということである。もしもそれらに従来日本政府がやってきた道路整備や所得減税よりも大きな効果があるのなら、増税などで長期財政規律を守る前提で低炭素化に大幅財政支出を行うことも考えられる。
8月29日、福田総理の辞意表明前に出された緊急総合対策では、家庭や企業への太陽光発電、省エネ家電への補助金、省エネ・新エネ導入への減税、エコ・カーへの補助金等が盛り込まれたが、これらの施策の経済活性化効果は大きく二つある。
一つは補助金や減税によって価格体系が変わり、個人や企業が低炭素の製品・サービスを買う選択がやや優位になるという点である。ただし例えば通常の自動車を買わずにプラグイン・ハイブリッド車を選択した場合、需要創出の差はわずかなので、太陽光のように「買うかどうか迷っている」プラスアルファのものでなければ効果は小さい。さらに言えば太陽光への補助は所得の低い借家世帯から大型持家世帯への所得移転だという反対論があることも事実である。
もう一つは低炭素製品・サービスを研究・開発・量産する企業の投資による経済活性化効果である。こちらは市場の成長がどの程度見込まれるかによって参入企業数も投資額も変わってくる。世界に低炭素技術と製品を提供する拠点として大きく成長するためのステップならば、政府による支出は道路工事や所得減税を上回る大きな経済効果をあげる可能性があるのだ。ドイツのQセル社が政府の補助策による太陽光発電の市場拡大に賭け、大型投資を繰り返して急成長したのは一つの例としてあげられる。
すなわち、低炭素化技術は市場の読みと技術の進展によっては経済対策になりうる。ただし、それを左右するのはどの技術が「当たり」、企業がうまく乗ってくるかについての「賢い眼」がなくてはならないし、「外れ」に賭ければ果てしない無駄遣いになるリスクもある。
日本の次のリーダーには、そうした点も踏まえて、低炭素社会へのビジョンをうまく武器にしてほしいものである。

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
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