連載コラム ライフスタイル 【小西康隆の『小粋の哲学』】 Vol.19
夜空が一段と美しい季節。鈴虫の音色と共に晩夏の気配を愉しもう。(1/2)
(株)インタープラネット プロデューサー 小西康隆
2008/09/09
北京オリンピックが終わり、高校野球も終わり、夏の風物詩である花火大会ももう大半は終わっただろう。世の中「祭りのあと」の様な気分の方々も多いのではないだろうか。8月は天災も多かったね。地球が怒っている、世の中に警告を発しているかの如く怒り、荒れ狂った大雨が降り続け、町や人々を濁流が呑み込みまるで映画「崖の上のポニョ」のワンシーンを見ているようだった。
8月末の東京では、至る処で稲妻が閃光し、まるで天から降りて来た龍の様な落雷が夜空を駆け巡っていた。先日、夕暮れ時に上野公園脇の不忍池を訪れたのだが、遠くの空で稲妻が花火大会の様に光り、池の水面を覆うように蓮の花が今にも咲き出しそうな蕾みを抱えていた。夜に輝く蓮の花はとても幻想的だ。蓮の花は死者が冥途への川を渡る時に手に持っていれば、極楽浄土へ導かれると云われている。落雷で群青色に光る夜空と水面の蓮の花を眺めていると、遠い昔に遊んだ祖母たちの姿を思い出すのである。
この上野不忍池の畔に今年もまた「蓮見茶屋」が店を開いている。仄かな灯りに照らされた蓮の花を眺めながら、冷酒を一献つけるのだ。水面から吹く心地良い涼風に和み、盃に映る月の灯りをぐいと呑む。暦はもう長月だ。そろそろ、月うさぎが盃に映る頃か。
毎年、京都のお盆では大文字焼きの行事が催されるが、この「大文字(五山)の送り火」の灯りを頼りに、ご先祖様が冥途へ帰るのだそうだ。昔から、この明りを盃の酒に映し、願い事をしながら呑み干すと願いが叶うと云う「言い伝え」がある。京都までは行けないが、幻想的な蓮の花を照らす月明りを大文字に見立てて、呑んでみるのも粋だろう。
此処は東京都と台東区が協力し運営しているそうだが、店に入ると石原慎太郎都知事の書いた「蓮見茶屋」の額が掛けられていた。都知事も毎年必ず立ち寄るそうだ。中では一文百円の木札が用いられる。千円の十文札を貰い、酒と特製蓮見弁当のセットを戴くのだ。酒は冷酒の一合徳利や生ビールのジョッキ出し、特製弁当も蓮根をふんだんに使った松花堂弁当風の逸品で、これが酒に合う。
畔に突き出た桟敷席で眺める蓮の群生は見事だ。早朝にポンと咲く花も素晴らしいが、今にも咲きそうな蕾みたちも実に美しい姿をしている。蓮の花の向こうには光り輝く弁天堂や五重の塔の遠景も美しい。
今年は9月末までの間、午後5時から9時まで営業しているので、存分に楽しめる。また、毎晩午後6時には江戸芸や落語、講談などの演芸も催されるので、大いに酒が進むのである。もちろん、昼から抹茶に和菓子等もあるので、たっぷりと江戸情緒を味わってみると良い。
















