西村陽(Kiyoshi Nishimura)
大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む
大阪大学大学院工学研究科客員教授 西村陽
2008/10/06
仙台出張の日程に合わせて地元電力会社の20代社員と勉強会をする機会に恵まれた。関東や関西と違って東北は広いので青森、秋田、盛岡、新潟等、多くの勤務地は仙台から遠い。そこからの参加者も含めて手弁当でたくさん集まってもらったので大変楽しい時間を過ごすことができた。
取り上げたテーマは環境・エネルギー情勢、エネルギー産業の戦略、人材・キャリア形成といったところだが、全体を通して言いたかったことは大きく二つで、一つは「課題は常に単純ではない」ということ、もう一つは「若い世代自身で考えて実行しなければならない」ということである。
環境・エネルギー分野におけるエネルギー産業は、環境で新産業を創る製造業や環境をめぐるリスク仲介や取引の枠組みを考える金融業と違い、常にある種のジレンマに直面している。原油安の時代にそれを頼って経営効率化を進めた結果燃料費が高騰して経営の不安定化はもちろん安定供給が危なくなるという「短期と長期のジレンマ」や、風力や太陽光による発電はより多く導入したいが、電力系統に支障が生じかねないという「環境と品質」のジレンマ代表的なものだが、エネルギー産業にいる以上、目前の課題を常に複眼的な目で捉え、視野を広く持つことが要求される。
また、これはエネルギー産業に限らず環境やエネルギーの事業活動は長期にわたり、発電所の計画から運転開始まで30年近くかかることも珍しくない。結果が出るまでに要する時間は一人の人間の会社人生を上回ることさえあるわけで、現経営陣やマネジメントは多くの場合本当の結果が出る時には会社にいない、ということになる。その時点で一番若い世代が最も強く自分の問題として考え、行動していかなければならないのだ。
大都市の電力会社に比べて存在が地味だが、地方圏の電力会社がわが国の低炭素社会シフトに果たす役割は極めて大きい。都市ガス会社のインフラが弱く、大都市圏で重油や灯油から転換することが多いメタンガスをあまり利用できない地方圏では、電気は唯一無二の低炭素化エネルギーである。そのためには発電をはじめとする供給サイド、工場・事務所・家庭それぞれの省エネ等の利用サイド、さらにはプラグイン・ハイブリッド自動車や電気自動車のような運輸部門の電化まで多岐にわたる電気の可能性を地方圏でも追求していく必要がある。その際地元の電力会社は、それぞれの地域特性に合わせたどのような電化が一番合っているのか見定め、行政や様々な企業、顧客と協力して社会的なシステム革新を進めることができる数少ない存在なのだ。
今回の参加者や電力会社の若手に限らず、若い世代がそれぞれ自分の場所でできる低炭素への道をしっかりと見定め、自分の思いを実践することこそが低炭素の国日本への重要な一歩ではないか、と感じた杜の都での一日であった。

大阪大学大学院工学研究科客員教授(ビジネスエンジニアリング専攻)、関西電力企画室・秘書室マネジャー。1961年富山県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、関西電力で調査、戦略、環境等を担当。1999〜2001年学習院大学特別客員教授。
主著に『電力改革の構図と戦略』... 続きを読む