連載コラム グルメ 【マックロマンスの遊牧民的バーライフ】 Vol.61

六本木〜ジャズクラブ メリージェーン(1/2)

バー・スタイリスト MAC ROMANCE


2008/10/10

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六本木〜ジャズクラブ メリージェーン

イギリスから強制送還になった後、再入国のためのビザの申請をして許可がおりるまでの間、東京で一人暮らしをしている友人のところに居候をしていた。何もしないでメシまで食わせてもらうわけにはいかないから、アルバイトをして生活費を稼ぐ事にした。

求人情報誌を見て適当に選んだ店は六本木にあるジャズクラブで、そこでウエイターとして働くことになった。ジャズクラブとはいえ演奏者の顔ぶれは様々で、ブルースの「近藤房之助」や、メリージェーンの「つのだひろ」、ムッシュの愛称で有名な「かまやつひろし」ら、そこそこ名の知れたアーティストが日替わりで登場していて、店内は毎晩ほぼ満席だった。けっこうな繁盛店だったと思う。

私としては、ほんの数週間前までステージの上に立っていた所から、いきなり裏方役に回ったわけなのだけれど、毎日働くということがとても新鮮で、純粋に労働を楽しんでいた。そこで知り合った人たちがとても快く私を受け入れてくれたことも、私がその職場を気に入った理由のうちのひとつだった。当時の私は若く、無知で愚かでとてもパワフルだった。皆からすれば、可愛がりがいのあるやんちゃな坊やだったんじゃないかと思う。

常連のお客には音楽関係の人が多く、毎日顔を会わせているうちに私がミュージシャンだと言う事が知れて、あるバンドに加入する誘いを受けたことがある。そのクラブでもゲスト出演していたデビュー目前の若い女性アーティストがいて、彼女のバックバンドでベースを弾かないかという話だった。

私はまだ元のバンドとの契約が残っていて、ビザが取得できたらすぐにまたイギリスに帰る約束になっていたのだけれど、正直なところ、またそこに戻りたいかどうかは疑問だった。長い間、ヨーロッパのアンダーグランドな世界に身をおいていた私の目には、きらきらしたバブル期の東京はとても魅力的に映ったのである。日本でミュージシャンをやるというのも悪くないような気がしていた。

しかし、そんな私の甘い考えは、その音楽事務所に話を聞きにいった時にすべて吹き飛ばされた。私は日本の音楽業界のシステムが、いや、音楽業界だけではなく、おそらくはすべてのシステムが、英国のそれと大きく異なる事を知って、本当に本当に驚愕したのである。





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