連載コラム グルメ 【マックロマンスの遊牧民的バーライフ】 Vol.62

こんにちはと言ってみてはいかがか?(1/2)

バー・スタイリスト MAC ROMANCE


2008/10/17

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こんにちはと言ってみてはいかがか?

知り合いで無農薬の野菜を作っている人がいる。趣味の話ではなくて、本気の農家である。でも、たいした商売になってなさそうだからプロの農家と呼んでいいのかちょっとわからない。トマト、じゃがいも、ネギ、キャベツなどの野菜を育てて、二束三文で親しい人たちに譲っている。それだけではとても食っていけないから、奥さんがダンプトラックの運転手をやって生計を立てている。野菜だけじゃなくてヤギも飼っている。以前は鶏を放し飼いにしていて、美味しい卵が手に入った。必要とあらば絞めて羽をむしり、その夜のメインディッシュになった。数年前から鳥インフルエンザの問題が深刻化し始めて、近隣への配慮から小屋ごとすべて焼き払われた。もともとが過疎地域だから安い賃料で土地を借りていたのだけれど、建て売り住宅が建ち始めてから状況が変わってきた。都心に通うのに決して便利な立地とは言えないけれど、一千万円代でマイホームはある種の人々にとっては魅力的な話である。オセロ・ゲームでまずい手を踏んだかの如く、空き地にどんどん家が建ち、気がつけば辺りは新興住宅街と化していた。ヤギの糞尿が臭いと苦情が来る。新しい住人たちがやってくるずっと前からヤギはここにいた。彼らにはヤギがいない地で暮らす選択もあった。わざわざ越してきたのは彼らの方なのだ。でもそんなことは誰もおぼえていない。ヤギ小屋が焼かれる日が来るのもそう遠くはなかろう。

ときおり野菜が送られてくる。夏には段ボール箱いっぱいの枝豆が届いた。枝豆は茎からはずして両端をハサミで切り落とし、塩をまぶして少し置く。鍋に湯をわかして塩がついたまま茹でる。お湯に油を少量入れるのがポイントである。何で油を入れると美味しくなるのか知らない。どうせ誰かからの受け売りだろうが、枝豆がおいしくなって困ることは何もない。とんでもない量だから知り合いにまわすつもりで茹でてみたけれど、食べ出してみたら止まらなくなり、結局ひとりでたいらげてしまった。ビールと枝豆。これ以上すばらしい組み合わせが他にあろうか。

茹でた枝豆だったら問題ないかも知れぬが、もらって困るものもある。都会でひとり暮らしの人だったら、カボチャやサツマイモをもらうのは迷惑であろう。そう言う私もそのへんの野菜はあまり好みではなくて、少々あつかいに困る。イモを原料にした焼酎になるとそれはもう大変な好物で、日々欠かさず摂取しているような次第なのだけれど、なんだろな。あの口の中がもわっとする感じがどうも好きになれないのである。私が以前働いていた店では、蒸かしたカボチャに甘い生クリームを添えたものが、堂々とメニューに載っていて、特に女性らにとても人気があった。カボチャに甘い生クリーム。私の理解の範囲を超えた気色の悪い食べ物だと思うが、味覚というのは十人十色である。これ以上文句を言うつもりはない。





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