庭園の中心に位置する「翠松園」は大正14年、旧三井財閥が別荘として建てた日本家屋だ。この匠の技が随所に見られる国の登録有形文化財は、新しい旅館の中で、ゲストが朝夕の食事をとるための食事処として見事に甦った。
思えば、この旅館は土地の歴史だけでなく、箱根の自然までうまく利用している。エントランスはなだらかな傾斜の頂上に位置するため、直線的な屋根と車寄せのなだらかなカーブが描く、ミニマルな印象の入り口に降り立ったとき、これから宿泊する建物やその先に広がる庭園などは一切見えない。
実際、エントランスは2階に位置し、到着したゲストはバトラーに案内されるままエレベーターでB1階まで下り、ロビー棟を出たところで、ようやく敷地の全貌を目にすることになる。
それにしても、このコントラストは新鮮だ。モダンでスタイリッシュなエントランスに比して、庭園の中央に鎮座するのは築80年余の「翠松園」。
和風と洋風、新しきものと古きものが調和する空間は、軽い驚きと同時に不思議な安らぎをもたらしてくれる。
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